Bee's Favorite

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映画「インサイダーズ 内部者たち」

【Bee's check point】

■韓国の映画(ドラマも)は、社会の縮図。
■金とコネの韓国社会を、すごく皮肉っている。
■さえないチンピラを演じたら、イ・ビョンホンさんは天下一品。

(見たのは2016年3月)

政界と財界とマスコミの癒着。それを暴こうとする検事と裏社会で手足として使われていたチンピラ。
こういう映画(ドラマもですが)が韓国でウケるわけは、その内容が多かれ少なかれ現実を反映していて、
やってきたことに相応の報いを受けるという展開がたぶん韓国の人たちには爽快なんでしょう。

この映画が縮図なのか、誇張なのかはわかりませんけど、
こういうのを見ると韓国本当に大変な社会だなあと思います。
ナッツ姫という事件がありましたが、あれドラマにはしょっちゅう出てくる典型的な財閥タイプで、
「ああ、本当にいるんだ~」くらいにしか思えませんでしたし。

韓国は学歴とコネと後ろ盾の社会。
それがなければどうやってもはい上がれない現実がこの映画の背景になっています。
政財界だけじゃなく検察とか警察でもそれはいっしょ。
警官になって検挙実績を上げたけれど警察大学を出ていないために出世できなかった男が、
勉強して検事になってみたものの、学閥とか閨閥がないためにまた出世できない。
そんなものがハナからないチンピラは、力でのし上がろうとする。
誰に対するというのではなく、社会に対する「恨(ハン)」というものが根深い。

検事とチンピラとジャーナリストは韓国の名優が演じていますので見ごたえはあります。
スピーディではないけど、じわじわ復讐が展開するので、ちょっと「ひぃ!」とか「おお!」とか思いながら見てました。
「内部者たち」というタイトル通り、今はだれが「内部」なのかがどんどん入れ替わるので、復讐の相手も方法も変わっていく。

こういう硬派な映画は日本だと小説が原作ですが、これはウェブ漫画が原作。
ドラマや映画、漫画などの若い作り手が、作品を通して社会を皮肉っていくというもの韓国らしいです。

でもいつも思うのですが、韓国映画は「盛りすぎ」。
復讐は1回では収まらず、とことん追いつめる。
ハリウッドだとどんでん返しがあって「あ!」っていうところで終わってちょっと爽快なところがありますが、
韓国映画はそこから種明かしが始まって、そこいらないよ、という後日談まで盛りだくさん。
なかなか納得できない、とことん言わないと気がすまない。撮ったものはなかなか切れない。
テーブルいっぱいに料理を並べて、キムチも頼みもしないのに出てくる韓国料理に似てます。

2時間以上の映画ですが、韓国のDVDはまだ言い足りないことがあるらしく、
30分追加したディレクターズカット版で出るそうです。
ええ?この話、1回終わってるじゃんと思うのですが、
いろいろあれもこれも後出ししたいことがあるのでしょうね。

いろんな意味「韓国」と言う社会を反映している映画と思いました。

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