印象派ばかりの展覧会を見るのは久しぶりでしたが、
「コート―ルド」という人のコレクションでできた美術館だというので、
会期の終わりに駆け込みで見てきました。
日本人は印象派が大好きなので、早めに行かないと混むなあと思っていたのですが、案の定。
全体としては、印象派の佳作を幅広く持っているという感じで、
蒐集家の品のいい趣味が感じられました。
コート―ルドさんは、レーヨン産業で資産を築いた事業家だそうですが、
お金にあかせて将来価値が上がりそうなものを買い集めたという感じはなく、
ある一定のきちんとした趣味嗜好によって、気に入ったものを買い集めたという感じがしました。
実際のところ、コレクションを一般の人にも公開する一方で、
美術の研究にも役立てているということで、
コート―ルドさんの写真もありましたけど、とっても品のいい紳士でした。
家の中に、実際にコレクションが飾ってある写真もありましたが、
この絵たちが本当に家の中に、さらりと飾ってあったのかと思うと、
ため息が出ます。
もし、印象派をこよなく愛していたら、
このコレクションはうらやましすぎるだろうと思えるほどです。
1900年代初頭に集められたようで、
今からではとても手に入らないようなものばかり。
ロンドンのコート―ルド美術館は現在改装中で、
その間、上野、名古屋、神戸でこの美術館展が巡回するそうですが、
改装がなければ、外に貸し出されることもないとか。
ありがたいことです。
コート―ルドさんは、とりわけセザンヌがお気に入りだったようで、
他の展覧会なら、それ1点を目玉にするような良い作品をたくさんお持ちです。
ルノワールをはじめとするそのほかの作品も、もちろん題材とかは全然違うのですが、
これは一人の人の「好み」が選ばせたものだなとわかるほどの粒ぞろい。
印象派の画家は多作の画家が多いので、中には「これはちょっと」というものもあるのですが、
このコレクションは本当にレベルが高いというか、見ごたえがありました。
最後まで、「うわ、これも持ってるの?」というようなものばかり。
私がまず気に入ったのは、アンリ・ルソーの「税関」という作品。
ジャングルと動物というイメージからはほど遠い絵なのですが、
何とも言えない構図にすっかり気に入ってしまいました。
正式には絵を習ったことがないというルソーですが、
「うまい!」というか「面白い!」と言いたくなるような。
ルソーは画家は趣味で、本職は税関吏だったそうですが、この絵は実在しない風景だそうです。
それから、セザンヌの未完の絵もありましたが、
最晩年に完成できずに終わった「曲がり道」という絵は、
何回も通り過ぎ、また戻って見てしまいました。
未完成だけあって、全体にポンポンと色を置いただけの風景画なのですが、
何とも言えない色合いで、これは完成してなくても欲しいなと思わせた作品です。
グッズ売り場の絵葉書コーナーにもこの絵があって、
絵葉書になるということは、それだけ「いいな」と思う人も多いはず。
残念なのは、実物と絵ハガキでは、ぜんぜん色が違うことでした。
(でもこの1枚に出会った記念に買いました)
https://intojapanwaraku.com/jpart/33042/2/
いつかロンドンに行くことがあったら、「コート―ルド美術館」訪ねてみようと思います。