Bee's Favorite

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映画「自由が丘で」

【Bee's check point】

韓国映画でも異色のホン・サンスものは、マニア好み。
■かっこいい俳優があえて、ダメな人を演じるというのが定番。
■オチがない、たいくつとわかっていても、つい見てしまうホン・サンス作品。

(見たのは2015年1月)

加瀬亮主演「自由が丘で」は韓国映画です。
ホン・サンス監督の映画はいつも終わることのない男女のくだくだうだうだの物語で、
今日も見る前から「ああ、つまんなかった」と思うのが目に見えていたんですが、それでもまた見ちゃいました。

男がまたどうしても会いたくなった恋人を探すために、仕事を辞めて韓国にやってきます。
探すあてもないので毎日のことを日記のように手紙に書き、
その長ったらしい手紙を受け取った女が、手にした手紙を落として順番をバラバラにしてしまったために、
どうも順番が変なままそれを読むというのがストーリーになっています。
映画はそのバラバラになった手紙の順に進み、前後が入れ違っているのですが、
それがどうにもかみ合わない男と女のどうどうめぐりのよう。
しかも韓国人と日本人は英語で話をする、加瀬亮のセリフも独り言も全部英語なので、
そのもどかしさといったら大変なものです。
「自由が丘」というのは日本の自由が丘ではなくソウルにあるカフェの名前で、
その町にはたくさんの坂道と曲がり角があり、そこで出会う人たちのそれぞれの事情もだんだん絡まってきます。

昨晩、ドラマの「オリエント急行殺人事件」を見ていて、
「人間というものはそんなに物事を順序だてて覚えてはいない」という名探偵のセリフを聞いたばかりだったので、
この断片的な展開が謎解きのようにも思えてしまいました。順序通りに進んだらあまりに単調な話だと思いますが、
入れ子になっているので次に何が起こるかわからない。
観ているうちに「あれ?」と思いながらつじつまが合ってきて、そこが最後まで映画を観させてしまうしかけなのです。

この手の映画は絶賛する人と酷評する人しかいなくて、
海外の映画祭で評価が高いものってだいたいつまんなかったりするんですが、
ホン・サンスの映画は毎回つまんないけど、クセになってまた見てしまうのです。

余談ですが、加瀬亮は実際は(韓国風にいうところの財閥)御曹司であり、
ホン・サンス映画の主役の男(どこにでもいるごく普通、よりちょっとダメな男)とはもっとも遠い位置にある人ですけど、
韓国のスターたちが結構裏で実業に励むのに比べて、本当に俳優一本の人だなあということが感じられました。

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