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すみだ北斎美術館

先日の「新北斎展」に触発されて
墨田区にある「すみだ北斎美術館」を見てきました。

墨田川の近くに生まれた北斎は90年の人生のほとんどをこの一帯で過ごしたということで、
墨田区が文化事業としてこの美術館を建てたというのはわかる気がします。
地元として作品や歴史を保存したいということでしょうね。

2016年に開館。外観はとてもモダンで、
墨田の長屋に住んでいた北斎のイメージはどこにもありません。

「新北斎展」で一部が公開されていた「隅田川両岸景色図巻」を所蔵していて、
その全体を見ることができます。
昨日は複製画が展示されていました。
年間を通じて公開するのは保存のためにはよくないのでしょうね。
明治時代にヨーロッパで売りに出され、その後行方が分からなくなっていたのが、
2015年にオークションに出て、それを美術館が買い取ったもの。
これはもう隅田川のそばにあるべき作品だと言えるでしょう。

展示室の中央に斜めに7mの絵巻が展示されています。
言問橋から吉原に向かう隅田川の両岸の景色が優美な色使いで描かれています。
英語と日本語で映像の紹介があり、それを見てからまた絵巻を見直し、
隅田川の川面に飛ぶ都鳥など、本当に細かくて小さい筆遣いにため息が出ます。

吉原に向かう人が持つ提灯の明かりは、
吉原にたどり着くころには日が暮れていることを表現しているそう。

企画展では「北斎とアニマルズ」というのをやっていました。
子どものころから、形あるものを描かずにいられないという北斎が、
ありとあらゆる動物を描いたものを集めて展示しています。
おそらく本物を見たことがない動物もあるのだと思いますが、
どこまでが何を参考にした想像なのかわかりませんが、どれも緻密です。

リアルな視点の中に茶目っ気もあり、
赤い頭巾をかぶったフクロウがかわいいと、一緒に行った友人にはうけていました。
絵の見本帳である「北斎漫画」は動物の宝庫で、
いくら見ても見飽きない。

薄暗い展示の常設展では、北斎の年代別の作品を展示したり、
浮世絵の作り方を紹介しています。
タッチパネルで見たい説明を探したり、モニター上では拡大縮小しながら、
絵の隅々まで見ることができる。
文字も画面だと明るいので、小さい文字の説明が貼ってあるのよりは助かります。

吉原の絵の説明では、吉原は元は日本橋人形町にあったことが紹介されていました。
一緒にいた友人が人形町の生まれで(当時は日本橋芳町)、
実家はもともとは料理屋だった建物だと教えてくれました。
昔一度行ったことがありますが、小さくて入り組んだ作りだったことを覚えています。

北斎の絵は数もあるのですが、分野も絵の対象も画法も多彩で、
本当に一人の画工の美術館なのかなと驚くばかりです。

最後に、北斎の住まいが再現され、
こたつ布団をかぶったまま絵を描く北斎とそれを見る娘の阿栄の人形があります。
それがときどき動いて、なんか生々しいのですが、
人気絵師であった北斎の貧しい暮らし、寝ながら描くという姿勢にびっくりします。
外国人のカップルも立ち止まって見入っていました。

小さい美術館なので1時間もあればさっとみられるのかなと思いましたが、
一つ一つが面白くて、1時間はあっという間に過ぎました。
また面白そうな企画展があったら行ってみたいと思います。

http://hokusai-museum.jp/