Bee's Favorite

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本『「王室」で読み解く世界史』

【Bee's check point】
■世界史をさっとおさらいするために。
■切り口を「王室」にしたというのが、わかりやすかった。
■でも、中南米と中東はまだ、混乱する。


映画とか絵画とか、特に西洋のものを好んで観ていると、
絶対に不可欠な知識というか教養というのがあります。

キリスト教(聖書)、ギリシャ神話、そして世界史。

まあ、当たり前といえばそうなんですけど。
この壁にぶち当たることは多いです。
ただ、どれもちゃんとした知識を得ようとすれば、
その作業のほうが膨大なので、いつもひるんでしまいます。

特に世界史は高校生のころから苦手で、
特に横文字の名前を覚えられなかったのと、
ヨーロッパのむちゃくちゃ入り組んだ歴史が頭に入らなかったことがその理由。
大人になってからも、なんどかチャレンジしましたが、
たいてい、ジョージ、エリザベスがたくさんでてくるあたりで挫折します。

マンガもずいぶん活用しました。
ベルサイユのばら」はもちろん、池田理代子作品には大変お世話になっています。
ロシア革命を描いた「オルフェウスの窓」、「エカテリーナ二世」、
ナポレオンの話もありました。
でも、メインとなる登場人物のところだけで、
どうもタテとヨコのつながりがわかりにくいんですよね。

『「王室」で読み解く世界史』は、世界史を地域ごとの「王室」でくくって説明しています。
これは今までにみなかったくくりで、
地域の歴史をタテに見ることができて、割とすっきりしました。
そういえば、日本史は、日本の歴史、
つまり万世一系の皇室の歴史だけをタテでみるから、わかりやすいんですね。
同じことを地域ごとにすればいいんだと。

それでも、中世以降のヨーロッパでは、もういろんな王室やら王族やらがいりみだれて、
名前も地名もごちゃごちゃです。

この本の最初に、日本の皇室がなぜ女系ではだめなのか、ということが書かれています。
なぜ、愛子様天皇になってはだめなのか、
いろいろ議論もあるようですけど、この本に書かれているとおり、
私もいままで「女系天皇」と「女性天皇」をごっちゃにしていたこともわかって、すっきりしました。

女性はいいけど、女系はだめなんだ、と。

他国の王族と政略結婚を繰り返し、国をのっとっていったハプスブルグ家の策略など、
読むほどに面白い。
そういう視点で見ると、ごちゃごちゃのヨーロッパ史もなんとなく見えてくるモノがあります。

「皇帝」と「王」の違い、それぞれの国がどういう意図で、
その最高位を名乗っているのか、正統性のない王位がなぜもろいのかなど、
歴史をまた違う目で見ることができました。

中東の歴史は、これまでにあまり気にしてなかったこともあり、
ちょっととっつきにくいところもありますけど。

著者の経歴をみてまた笑っちゃったんですけど(申し訳ない)、
予備校の講師だった方が、選挙にでて落選して、
生活のために書くことを始めたということで、
あとがきにも必死さが伝わってきました。

狭く深く追求している歴史学者からは、
いろいろ突っ込まれることがありそうですが、
こういうまとめ方をしてもらえたことは、すごくうれしいことです。
「教養として知っておきたい」って、タイトルにも入れてありますし、
学生時代から世界史から逃げてきた身にはとてもありがたいです。

というか、世界史の授業って、あっちへ飛んだりこっちへ戻ったり、
どうして全部の世界史をタテに流してたんだろう?

このところ、英国女王モノの映画が何本か来ていますし、
やはり政治だけじゃなく家柄や領土などの事情がいりくんでいればいるほど、
その心情を推し量る作品も面白くなるというものでしょう。