Bee's Favorite

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映画「女の一生」

【Bee's check point】

■原作の小説を読んでいることが前提で、映画はできています。
■無理に、現代の感覚を入れようとせず、原作の時代感に忠実。
■映像が美しいだけに、人生が壊れていく様が哀しい。

(見たのは2018年1月)

岩波ホールで上映中の「女の一生」を見てきました。
なんでこれ、見ちゃったんだろう?^^;
映画でこれほど暗い気分になったのは久しぶりです。
「世界文学の傑作」「美しく繊細な映像」っていう宣伝文句に負けちゃったんですよね。

先に見ていた友人から、「見るなら原作読み直した方がいいよ」って言われていたので、
年明けからこの鬱々とする小説を読みました。
映画は、人間関係の説明とかもなく、突然話が飛んだり前後が入れ替わったりします。
フランスではモーパッサンは一般教養なんですね。
ストーリーと人間関係を知らずに見たら、ひぇ~、なんだこの映画と思ったかも。

女の一生」というテーマで映画を見るのはツラすぎます。
原題は「Une vie」。どこにも「女の」とか「彼女の」とは書いていない。
もしかしたら主役のジャンヌだけでなく、その周辺にいる人たちの「人生」のことも含まれているのかもしれません。
原作の小説も、まるで他人事を傍観するように淡々と進みます。
写実主義、というんですか。

ジャンヌはこんなところで農園をいくつも持っているような貴族の一人娘なのに、
夫は浮気を繰り返すし(浮気相手の旦那に殺されるし)、
息子はある日女のもとへ行ったきりお金の無心しかしてこない。
最後に助けてくれたのは、夫の子どもを産んだ元メイド。
ストーリーはあんまりだけど、映画としてはものすごくいろんなことを考えてつくられていると思います。
こうなるはずってわかっているので、いろんな描写が突然来ても、ああ、こうなのか~といろいろショックです。

舞台となるノルマンディーが美しいんですよね。
太陽の日差しは明るく、うそくの火だけの夜はとても暗い。

最後に財産の管理人?から「あなたにはもうお金がありません」っていわれて、
「浪費なんかしていないのに」とジャンヌが言うのを、これが150年前だということを差し引いても、
単に彼女は世間知らずで愚かだとは言い切れない恐ろしさがありました。
私の周囲でも、似たような話を見た気がします。
21世紀なのに。

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